理事長所信

2026年度理事長 高柳  翔

 

【スローガン】

時代を超えて繋ぐ想い

60年の歩みから、次代への約束を

 

【基本理念】

 佐久青年会議所は、先人が築き上げた歴史と精神を礎に、志を受け継ぎ、仲間と共に未来を切り拓く行動者であり続ける。次代を担う人材を育成し、地域に希望と誇りを灯し、持続可能な佐久の未来を創造する。

【基本方針】

1.心豊かな青少年育成

2.古きを訪ね新しきを創造するまちづくり

3.60周年から始まる新たな挑戦

4.未来に向けたより良い組織の発展

 

 

 【はじめに】

 佐久青年会議所は、創立60周年という大きな節目を迎えます。この長きにわたる歩みは、地域の発展と人づくりに心血を注ぎ続けてこられた先輩諸賢の弛まぬ努力と情熱の結晶であり、その歴史の重みを胸に、心より敬意と感謝を申し上げます。
私たちの活動の原点は、日本青年会議所の設立趣意書に掲げられた「全人類の光明は、われわれ青年会議所の純粋な正義感と、目的完遂の確固たる実行力にうらづけられて初めてその輝きを見出し得る」という理念にあります。戦後の混乱期、国の再建と地域社会の復興を自らの手で成し遂げようと立ち上がった青年たちの志は、1966年、佐久地域の先輩諸賢によって引き継がれ、佐久青年会議所の創立へと結実しました。佐久青年会議所の設立趣意書には、郷土愛と誇りを胸に地域の進歩に寄与し、次代を担う青年が互いに切磋琢磨することの重要性が力強く謳われ、その精神は今日まで脈々と受け継がれています。
60年の歴史の中で、佐久地域は幾度もの変化を経験してきました。北陸新幹線の開通や中部横断自動車道の整備により、都市との距離は縮まり、観光や産業の可能性は広がりました。しかし同時に、少子高齢化と人口減少の加速、地域産業の後継者不足、若者の流出、そして地域コミュニティの希薄化といった課題が深刻さを増しています。さらに、価値観の多様化や急速な情報化社会の進展は、人々の暮らし方や働き方、そして人間関係の在り方を大きく変え、地域の結束や持続可能性に新たな挑戦を突き付けています。
これらの社会情勢は、佐久青年会議所の存在意義を改めて問い直すものです。私たちは単なる親睦団体ではなく、「行動する青年」の集まりです。60年の歴史で培われた経験と人脈を礎に、現代の課題に真正面から立ち向かい、地域の未来を切り拓く責務があります。先輩諸賢が築き上げた確かな基盤の上に、時代に即した新たな挑戦を重ね、持続可能で希望に満ちた佐久を創造すること。それこそが、設立趣意書の精神を現代に生かし、未来へとつなぐ道です。
私たちは、地域の子どもたちが夢を抱き、大人たちが誇りをもって語り合える佐久を目指し、青年らしい情熱と行動力で歩み続けます。60周年という節目は、過去に敬意をはらい、現在を省み、未来を切り拓く決意を新たにする瞬間です。この歴史と志を胸に、佐久青年会議所はこれからも力強く前進し続けます。

 

〜心豊かな青少年育成〜

 私たちの暮らしは、この数十年で大きく変わりました。インターネットやスマートフォンの普及により、世界中の出来事や映像、文化に瞬時に触れられる時代となり、子どもたちも小さな画面を通じて地球の裏側の風景や出来事を知ることができます。しかし、この便利さの影で、子どもたちの成長環境には深刻な変化が生じています。直接顔を合わせずに交わされる言葉や態度は時に無責任になりやすく、匿名性に隠れた心ないやり取りが陰湿ないじめを生み出しています。
かつて地域や遊びの中で自然に身につけていた「人との距離感」や「相手を思いやる心」が育ちにくくなっていることは、現代社会の大きな課題です。この心の在り方を取り戻すためには、互いに向き合い、相手の存在を受け止める姿勢を養うことが求められます。言葉の奥にある感情を感じ取り、自分とは異なる考えを尊重しようとする意識が芽生えたとき、真に豊かな人間関係が築かれていきます。思いやりは一瞬の行為ではなく、心を寄せ合いながら重ねていく関係性の中で育まれるものなのです。
その土台となるのが、私たちの身近に広がる自然と文化です。遥かにそびえる山々の力強い姿、清らかな風が吹き抜ける大地、雪解けが運ぶ澄んだ水脈、季節ごとに色を変える草木や田畑の風景、こうした豊かな環境は子どもたちが五感を通じて感性を磨き、心を育むための舞台に満ちています。しかし現代の暮らしの中で、そうした自然や文化に触れる機会は少なくなりつつあります。子どもたちの心を動かす「本物の体験」とは、自らの足で歩き、手で触れ、全身で感じることでしか得られません。
泥にまみれて農作業をした記憶や、雪解け水の冷たさに声をあげる瞬間、仲間と祭りの太鼓を打ち鳴らす高揚感、そうした経験は机上の知識では代えられない、生きた学びと感動をもたらします。こうした体験や交流は、自分たちの暮らす場所の魅力を改めて気づかせてくれるとともに、異なる価値観との出会いを通じて視野を広げるきっかけとなります。そして子どもたちは「自分たちにしかない豊かさ」に誇りを持ち、未来への責任感を胸に抱くようになるのです。
心豊かな青少年の育成は、学校教育だけで成し得るものではありません。家庭や地域、そして私たち大人一人ひとりが協力し、子どもたちが自らの目で見て、耳で聞き、心で感じる体験を重ねられる環境を整えることが不可欠です。それこそが最大の財産であり、次代へと受け継ぐべき未来への贈り物なのです。

〜古きを訪ね新しきを創造するまちづくり〜

 佐久地域は、古くから中山道や北国街道の宿場町として栄え、人や物、文化が行き交う要衝として発展してきました。四方を山々に囲まれ、豊かな水と肥沃な土地に恵まれたこの地域では、農業や商業、伝統文化が相互に支え合いながら、独自の暮らしと誇りを育んできました。祭りや地域行事、世代を超えた助け合いの仕組みは、長年に渡り佐久地域を支える土台となってきたのです。
現代の移り変わりは、地域のあり方にも新しい風を吹き込んでいます。人々の暮らしや関わり合いのかたちはかつてとは異なり、日常の営みの中にも変化の兆しが見えています。それは、長い歴史の中で積み重ねられてきた地域の姿に、新たな課題と可能性を同時にもたらしています。
まちの課題にアクセスする第一歩は、正確な現状把握です。統計データだけでは見えない地域の声を丁寧に拾い、住民、事業者、行政、それぞれの立場から課題と可能性を洗い出します。次に、それらを地域全体で共有し、優先順位を明確にします。これは行政任せではなく、地域の人々が主体的に関わるプロセスでなければなりません。その上で、短期的な成果だけを求めるのではなく、5年、10年、20年先を見据えた事業を行います。
例えば、歴史的建造物や文化資源を観光資源として活用する計画を立てる場合も、単なるイベント消費で終わらせず、教育・産業・地域交流と連動させる。農業や自然環境を守る活動も、環境教育や都市部との交流事業と組み合わせて持続性を確保する。こうした多層的な戦略が、地域の本当の底力を引き出します。
「地域に先駆けた運動」とは、地域がまだ手を付けていない課題や可能性に着目し、先んじて取り組むことです。外部からの補助や流行に頼るだけではなく、佐久の特性や強みを最大限に生かし、自らモデルケースを作り出す。その過程で得られたノウハウや成果を広く発信し、他団体の参考となる存在になることが、佐久のブランド価値を高め、未来の人材や投資を呼び込む力となります。
まちづくりは、目先の発展だけを追うと、やがて疲弊します。必要なのは、地域の歴史と文化を「古き良き資源」として尊重しつつ、それを現代的な価値へと変換する発想です。古きを訪ねて知恵を借り、新しきを創造して次代へ渡す。この循環を回すために私たちは「分析」「展開」「実行」「検証」というプロセスを地道に積み重ねる覚悟が必要です。
町や村は、ただの地名や行政単位ではありません。そこに暮らす人々の営み、歴史、文化、自然、そして誇りが詰まった生きた存在です。私たちは、この地域が未来の地図から消えることを看過せず、「消滅」ではなく「進化」という選択を取らねばなりません。
佐久地域は、古きを訪ね新しきを創造するまちづくりによって、必ずや次の時代に誇れる姿を築くことができます。その先頭に立ち、先駆的な運動を展開することこそ、今を生きる私たちの使命です。

 

〜60周年から始まる新たな挑戦〜

 60周年という節目を迎える今、佐久青年会議所はこれまでの歴史を振り返りながら、未来へ向けて確かな一歩を踏み出そうとしています。今日、私たちが地域に信頼され、認められているのは、先輩諸賢が情熱と覚悟をもって行動を積み重ね、地域に確かな足跡を残してくださったからです。その歩みを受け継ぐ私たちに求められているのは、過去を称えることにとどまらず、これからの時代をどう切り拓くかを示すことにあります。
青年会議所は単年度制という特性を持ち、毎年新しいリーダーが立ち、新しい事業が生まれることで、常に挑戦心と新鮮さを保ってきました。この仕組みは大きな力である一方で、活動の方向性が分散してしまうこともあります。だからこそ、これまでの歩みを整理し、未来に向けて明確な道筋を描く機会が必要です。
その道筋とは、中長期のビジョンです。「明るい豊かな社会」とは何を意味するのか。青年にどのような学びと成長の場を提供していくのか。そして、この地域においてどのような役割を担っていくのか。これらの問いに真摯に向き合い、その答えを仲間と共有することが、組織を一つにまとめ、同じ未来を目指して進んでいく力につながります。同時に、その姿勢を外部に示すことで、佐久青年会議所が地域にとってどのような存在であるのかが鮮明になり、より確かな信頼を築くことができます。
この機会はまた、私たちのリーダーシップを改めて表す場でもあります。単に知名度を高めることではなく、「青年会議所こそ地域を導く存在である」と広く認められ続けること。それこそが私たちに課せられた使命です。先輩諸賢が築いてくださった信頼を土台に、私たちは常に先頭に立ち、未来を切り拓く姿を行動で示していかなければなりません。
さらに、この節目は持続的な挑戦を生み出す出発点となります。毎年の事業はそれぞれに意義がありますが、大きな方向性を見据えながら取り組むことで、その影響力は一過性に終わることなく、積み重なっていきます。社会の変化を生み出すべき領域を定め、継続して力を注ぐこと。それが確かな成果となり、地域に新しい価値を生み出す原動力となります。
60周年は新たな始まりを告げる節目です。これまでの歩みを礎とし、これからの挑戦を描き出す契機としながら、私たちは次代を担う仲間と共に未来を切り拓いていきます。

 

〜未来に向けたより良い組織の発展〜

 未来に向けて組織をより良く発展させるためには、現状を正確に見つめ、そこから導かれる変革の必要性を全員が共有することが不可欠です。近年、佐久青年会議所には新しいメンバーが多く加わっています。一見すると経験不足が課題のようにも映りますが、実はこれは大きな可能性を秘めた状況です。青年会議所活動に長く携わることのできる人材が多く揃っているということは、長期的な視野で地域と向き合える組織基盤があるということでもあります。
若手の持つ柔軟な発想や行動力と、長期的な関わりによる持続力が共存する今の組織は、まさに変革のための土壌が整っている状態です。大切なのは、この多様な力を同じ方向に向けることです。異なる経験や価値観を持つメンバーが互いに刺激を与え合い、学び合い、組織全体の視野を広げていくことで、これまでにない発想や行動が生まれます。
そのためには、組織が常に開かれた状態であることが重要です。役職や年次に関わらず意見を交わし合える雰囲気があれば、誰もが主体性を持って活動に臨むことができます。そして、一人ひとりの挑戦を組織全体が支え合う文化があれば、新しい試みも継続的な取り組みも力強く前に進められます。
また、目先の成果だけを追うのではなく、将来を見据えて動く姿勢が求められます。地域の課題は一朝一夕で解決できるものではなく、時には数年、数十年という時間軸での取り組みが必要です。その長い道のりを歩み続けるためには、活動の目的や理念を全員で共有し、時代の変化に応じて柔軟に形を変えていく覚悟が必要です。過去のやり方にとらわれることなく、新しい価値を積極的に取り入れ、そしてまた組織の根幹をなす精神は揺るがない、そのバランスこそが未来への発展を支えます。
今は変革の時です。外部環境の変化に受け身で対応するのではなく、自ら変化を起こし、その先頭に立つ存在になることが求められています。変革とは、大きな事業や目立つ改革だけを指すものではありません。日々の活動の中での意識の持ち方や、互いに向き合う姿勢の積み重ねが、やがて組織の在り方そのものを変えていきます。
未来に向けたより良い組織とは、多様な人材が互いの強みを活かし合い、共通の目的に向かって一体となって進むことができる組織です。そこには、経験豊富なメンバーの知恵と、新しいメンバーの情熱が融合し、時代の変化にも揺らがないしなやかな強さがあります。そして、その力は必ず地域の発展へと還元されます。
私たちは、この機会をただの世代交代の時期として捉えるのではなく、組織そのものが成長し、進化するための転機として生かさなければなりません。変革の波を自ら起こし、未来を切り拓く。その覚悟を持った時、佐久青年会議所はさらに強く、誇れる組織として次代へ受け継がれていくのです。

 

【結びに】

 今こそ、私たち一人ひとりが未来に向けて確かな歩みを始める時です。たとえ小さな一歩であっても、その一歩はやがて未来の大きな一歩へとつながります。一人の力では小さな変化かもしれません。しかし、佐久青年会議所が地域のリーダーとして志をひとつに行動すれば、その小さな変化は確かなうねりとなり、地域全体を動かす大きな力となります。

多様な意見や価値観を受け入れ、互いの強みを尊重し合い、仲間と力を合わせることで、一人では到達できない大きな成果が生まれます。そして、その先にあるのは、短期的な成果ではなく、10年先、20年先を見据えた確かな持続的発展です。

私には、初めて委員長を務めさせていただいた時から大切にしている言葉があります。アルベルト・アインシュタインの「ほかの誰かの元気な笑顔のために自分が生きていることを、私たちは知っている。それは自分の幸福を支えてくれているんだ」という言葉です。この想いは、私の活動の根幹にあり、これからも変わることはありません。私たちの挑戦もまた、誰かの笑顔を生み、その笑顔がさらに私たちを支える力となっていきます。仲間と共に歩むこの一年の挑戦は、次の時代の佐久を形づくる第一歩です。私たちはその道を誇りと情熱をもって進んでまいります。